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こころのコラム

子育てに疲れるのは悪いことじゃない

作成日:2021.09.10

はじめてのこころの相談

新型コロナの影響で、子育て世代のストレスや疲労が懸念されています。育児中は、ただでさえ心配事が多く、心身ともに負担が大きいもの。それがコロナ禍により外出に制限がかかったり、周囲とのコミュニケーションが減ったりすることで、イライラや気分が落ち込むなどのメンタルヘルスの問題が増加しているようです。

子どもの健やかな成長のためにも、親のこころの健康は大切です。この記事では、コロナ禍での子育て疲れの問題を探り、どう解決したらよいのか、その対処法について考えていきます。

1. コロナ禍の子育て、無理はしないで

コロナ禍によって、世の中は大きく変化しました。厚生労働省が発表した「新型コロナウイルス感染症に係るメンタルヘルスに関する調査結果」によると、回答者の約5割が、何らかの不安を感じているといいます。

特に乳幼児を抱える母親は、毎日が忙しく息をつく暇もありませんし、予測不可能な行動をとる子どもからまったく目を離せません。加えて今回のコロナ禍で、これまでの「当たり前」が難しくなり、今まで以上に子育てへの負担が増しているのです。

1.1. ずっと家にいるストレスと孤独感

いつになったら収束するのか、先が見えないコロナ禍。
感染拡大が始まった当初は、感染そのものや、仕事、お金に対する不安がクローズアップされていました。しかし、自粛が長期化することで家の中で過ごす時間が増え、子育て中の母親たちに新たなストレスが生じているようです。

夫がリモートワークになったことによるストレス

夫が家にいることで「見張られているようで、気が休まらない」「夫がリビングで仕事をしているので、子どもが騒ぐ声に気をつかうようになった」「自由に育児をしにくくなった」などの声があります。また、「今までは昼食を簡単に済ませていたのに、夫のためにきちんと準備をしないと怒られる」「片づけの回数が増えた」など、家事の負担が増えたことによる悲鳴も。また、「夫が育児に口を出すようになって口論が増えた」「夫の子どもへの当たりが強く、精神的に辛い」など、子どもをめぐって、夫との関係が悪化することに悩む人も増えています。


孤独感

以前であれば、ママ友と愚痴を言い合ったり、実家の両親に子どもを預けたりするなどして息抜きをしていましたが、コロナ禍では、そういったこともお互いに遠慮するように。
周りとのコミュニケーションが減ることで孤独感に襲われることがあるのではないでしょうか。ストレスから、つい子どもに冷たく当たってしまい、自己嫌悪に陥る母親も少なくありません。


子どもたちのストレス

コロナ禍は、子どもたちのこころにも影響を及ぼしています。子どもは大人の不安を敏感に察知するもの。元気がなくなって食欲が落ちたり、イライラして怒りっぽくなったり、ゲームに没頭するなど、ストレスに伴う心理的な反応が見られる子どもも増えています。そんな子どもたちを見ることで、自分の育児に自信を失い、うつに似た症状に悩む母親もいるようです。

コロナ禍での育児に無理は禁物です。自分は「親」であると同時に、「ひとりの人間」でもあることを思い出し、これまで以上に、自分自身をケアすることが大切です。

2. コロナ禍で顕著になった育児疲れの原因

今回のコロナ禍で、育児疲れの問題がこれまで以上にクローズアップされるようになりました。親のこころのケアのためにも、なぜ子育てが辛いのか、その原因を探ることが重要になってきます。ここでは、特に注意が必要な原因について説明します。

2.1. 一人の時間がない

育児疲れの大きな要因のひとつが、「一人の時間がない」ことです。乳児がいる母親は、昼夜問わず、授乳やおむつ替えを何度も繰り返さなければなりません。子どもがハイハイできるようになると、自由に動き回るようになり、片時も目を離せなくなります。このように、子どもの成長の段階に伴って、育児はどんどんハードになり、自分の時間がどんどん犠牲になっていきます。

2.2. 予定通りに生活ができない

子育て中は何かとイレギュラーなことが多く、予定通りにものごとが進まないものです。子どもが昼寝をしている間に家事をしようと計画していたのに、結局寝てくれなかったり、幼稚園に行っている間に用事を済まそうと思っていたのに、発熱したからお迎えにくるように幼稚園から連絡が入ったりすることは少なくありません。
朝の忙しい時間にぐずられた、出かける間際にジュースをこぼして着替えなければいけなくなったなど、次々と予定が覆されていくストレスは大変なものです。

2.3. 周りから認められない

子育て中は、子どもを優先しなければならないことが多く、自分のことは後回しになりがちです。どんなに眠くても、自分が寝るのは子どもを寝かしつけた後ですし、食事も子どもの面倒を見ながらなので、ゆっくり味わえません。一人で買い物に行きたい、ゆっくりお風呂に入りたい、落ち着いて本を読みたいと思っても、そんな時間はほとんどないのです。

仕事であれば、その対価として給料がもらえますが、育児にはそれがありません。こころも体も疲れ切っているのに、その頑張りは「親なのだから当たり前」として扱われてしまうのは辛いものです。周囲から頑張りを評価されないことも、育児ストレスを助長させているのかもしれません。

3. 子育てに疲れた時の思考法

子育てに疲れ、ストレスでこころがいっぱいになったとき、考え方を変えることで元気になれる場合があります。辛い気持ちをやわらげ、「母親はこうあるべき」という思い込みから解放しましょう。

3.1. 完璧主義をやめる

「育児も家事も仕事も、すべて完璧にこなさなければならない」と思い込んでいませんか?子育てに疲れてしまう人ほど、真面目で責任感が強く、完璧主義な傾向があります。周囲に助けを求めることを躊躇してしまい、自分で解決しようと考えがちです。

しかし、育児は決して完璧にできるものではありませんし、完璧である必要もありません。おむつ替えや食事、お風呂など、最低限のことさえできていれば、あとは手を抜いてもいいのです。

「やらなくてもいいこと」を決めることで、こころにゆとりが生まれます。大切な子どものためにも、完璧主義を捨てて、おおらかな育児を心がけてみてはいかがでしょうか。

3.2. 自己肯定をする

家事や育児が思い通りにいかなくなると、ストレスでこころの余裕を失ってしまいがちです。

慣れない子育てに疲れるのは当たり前のことなのに、うまくできない自分を責めてしまう人もいます。全エネルギーを子どもに注ぐことで、自分を肯定するために必要なエネルギーが枯渇してしまうのかもしれません。

主婦業や子育て業をお給料に換算するとしたら、かなりの高額になるはずです。それを親たちは無償で必死にこなしています。そんな自分のすばらしさを、自分自身がしっかりと認めてあげましょう。

そして、「今は疲れているから休んでもいい」「家事ができないのは当たり前で、悪いことではない」と肯定してあげましょう。

3.3. 今しかできないことだと考える

永遠に続くように思える育児にも終わりがあります。気づくと子どもは成長し、少しずつ親の手から離れていくものです。確かに今は大変な時期で、先が見えないように感じるかもしれませんが、2年後、3年後も同じ状況が続くことはありません。

子育て中は、子ども中心の生活になり、肉体的にも精神的にも疲労の多い時期です。親の期待通りに子どもが成長するとも限りません。それでも、子どもの成長を通して、親自身も成長していくものです。これは、子どもを授かった人だけが経験できる特権ともいえるでしょう。

子育てという素晴らしい経験ができる限られた時間だと考えれば、気持ちが少し楽になるのではないでしょうか?

4. おすすめのリラックス方法

子育てに疲れたときは、まず気持ちを落ち着けて、ゆっくり休むことが大切です。リラックスすることで、張り詰めていた気持ちがほぐれ、育児を頑張るためのエネルギーも生まれます。ここでは、子育てに疲れている人たちにおすすめのリラックス方法をご紹介します。

4.1. おいしいものを食べる

疲れを癒し、リラックスできる方法としておすすめなのが、おいしいものを食べるプチ贅沢です。

1日中イライラするような、いわゆる慢性的なストレスを抱えているとき、おいしいものを食べたくなる、という人は多いでしょう。

食べ物とストレスには大きなつながりがあります。ストレスを感じると、脳内ではストレスに関わるホルモンが分泌されるのですが、おいしいものを食べることで、それらのホルモン分泌が抑制されると考えられています。

もちろん、ドカ食いはよくありませんが、適量であれば、おいしいものを食べる行為が、ストレスを緩和し、こころを満たすのに有効なことがわかっています。

ストレスの緩和には、ビタミンB群やビタミンC、カルシウム、たんぱく質などの栄養素が効果的。

また、栄養素にこだわらず、SNSで評判のスイーツでも、華やかなお弁当でも、自分が幸せを感じるものを選ぶことも大切です。

4.2. 睡眠をとる

子育て中の睡眠不足の悩みは深刻です。子どもを寝かしつけるのに時間がかかったり、夜泣きがひどかったり。熟睡できない日が多いのではないでしょうか。

人はストレスの原因に出会うと、それを乗り越えるために交感神経が優位になり、脳が戦闘状態になります。この状態が続くとリラックスしたくてもこころが落ち着かず、神経が過敏になってしまうのです。結果的に、寝つきが悪くなったり、眠りが浅くなって夜中に何度も目が覚めたりと熟睡できなくなってしまいます。

熟睡できないと、翌朝も疲れが残り、倦怠感や注意力の散漫、意欲の低下や頭痛など、健康に支障が出てしまい、親の不調が子どもに影響する恐れがあるでしょう。

そういった事態を防ぐためにも、コロナ禍であっても、規則正しい睡眠リズムが大切になってきます。

睡眠と覚醒のリズムをつくるために、次のようなことをこころがけましょう。

就寝前はスマホをオフにし照明は暗く

タブレットなどから発するブルーライトに触れると、寝つきが悪くなり、体内時計のリズムが乱れて翌朝の覚醒に影響があることがわかっています。寝室の照明も暗くして、メラトニンの分泌を妨げないようにしましょう。


就寝前にコーヒーやお酒を控える

就寝前にコーヒーや緑茶などに含まれるカフェインを摂ると、覚醒作用により寝つきを悪くする可能性があります。また、寝酒も睡眠を妨げることがわかっています。


朝食を摂る

睡眠のリズムが不規則な人は、朝食を食べない、もしくは少ししか食べない傾向があることがわかっています。朝に食欲がない人は、フルーツやヨーグルトなど口にしやすいものを摂って体を目覚めさせましょう。


一定の時間に起床して光を浴びる

睡眠と覚醒のリズムを崩さないように、毎朝同じ時刻に起きるようにしましょう。また、起床後すぐにカーテンを開けて朝日を浴びることも大切です。太陽光には体内時計を調整する働きがあります。

とはいえ、まだ乳幼児がいる人にとって、規則正しい睡眠をとるのは、ほとんど不可能でしょう。そういった場合、睡眠時間にこだわらず、昼間に眠くなったら30分程度、仮眠をとるようにしましょう。そして、辛いときは「寝かせてほしい」と家族にSOSを出すことが大切です。

4.3. 適度な運動をする

リラックス効果を得るために、睡眠と併せて取り入れたいのが、適度な運動です。
厚生労働省が発表した「健康づくりのための身体活動基準2013」でも、運動は気分転換やストレス解消に有効なことが示されています。

運動をすると、精神を安定させる脳内ホルモン、セロトニンの分泌を活性化することがわかっており、特にメンタルを整えたいときは、一定のリズムが繰り返される、ジョギングやウォーキング、サイクリングなどの有酸素運動が有効とされています。

子育て中で運動する時間をとりづらい場合は、1日15分程度を目安に、近所を散歩するだけでも十分効果があります。散歩も難しい日は、ガムを噛むことで、ストレスの緩和が期待できるようです。

4.4. 泣ける映画を見る

こころが温まる映画を見ると涙が出てくることがありますよね。
実は、感動して思わず涙を流すことで副交感神経が優位になり、ストレスの緩和に効果があるのではないかと考えられているのです。

脳生理学者の有田秀穂氏が実施した、泣ける映画を鑑賞して、泣く前後の脳の活性度を調べたテストでは、抑うつや疲労、不安、緊張、怒り、混乱などの項目で被験者の半数以上に改善効果が見られたことが明らかになっています。涙は感情と強いつながりがあり、涙を流すことで、こころのリラックスにもつながるようです。

4.5. 自分で自分のことを褒める

疲労困憊するほど頑張っているのに、周囲から評価されにくい育児。もし誰も褒めてくれないのであれば、ぜひ、自分で自分のことを褒めてあげましょう。

「眠いのに頑張って赤ちゃんを寝かしつけた!」「疲れているのに、家族のために夕食をつくった」など、どんなことでもよいのです。自分を褒めることで自己肯定感が高まり、ネガティブな気分をプラスのエネルギーに変えることができます。

育児で疲れている自分に本当の意味で共感できるのは、もう一人の自分だけ。自分こそ最高の味方であり、支えてくれる存在なのです。

5. まとめ

子育てに疲れたとき、最も大切なのは頑張り過ぎないことです。コロナ禍で子育てのストレス発散が制限されていますが、親が疲れ切ってしまい、こころを病んでしまうと、最低限の育児さえできなくなるかもしれません。子どもにイライラしてもよいのです。何もかも自分でやる必要はありません。「自分が頑張らなくてはいけない」というプレッシャーを手放して、無理せず、自分に優しくする時間をつくりましょう。

監修

慶應義塾大学病院 三村 將 先生

はれそら監修医師紹介ページ

本サイトに掲載された健康情報は医師や専門家の監修したものですが、啓発を目的としたものであり、医療関係者に対する相談に代わるものではありません。治療については、個々の特性を考慮し医師等の医療関係者と相談の上決定してください。

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