核酸医薬は、近年、急速に発展している新しい医薬品モダリティであり、大きな注目を集めています。その最大の特徴は、低分子医薬や抗体医薬といった従来の医薬品モダリティが作用することのできない標的分子も相手にできる点です。核酸医薬は、mRNAなどのRNA分子に特異的に結合して分解することにより、そのmRNAが産生するタンパク分子を消失させることができます。低分子医薬や抗体医薬が作用できるタンパク分子は、特定の構造を持つもののみに限られています。そのため、様々な疾患の標的となりうる多くの有用なタンパク分子が、低分子や抗体医薬では狙うことができない標的(undruggable target)として手つかずのまま残っていると考えられています。核酸医薬は、それらの標的分子も相手にすることができるため、これまでに創製が不可能であった疾患に対する薬を作ることができると期待されています。

低分子医薬、抗体医薬は、特定の構造を持つタンパク分子(低分子医薬:黄色のタンパク分子、抗体医薬:ピンク色のタンパク分子)のみに作用することができる。核酸医薬は、タンパク分子の構造とは無関係に、すべての種類のmRNA(黄緑色)に作用することができる。そのため、低分子医薬や抗体医薬が作用することができなかった標的分子(青色・紫色・緑色のタンパク分子)も相手にすることができ、標的分子の可能性(ターゲットスペース)を拡大することができる。