INTRODUCTION 更年期とは、
閉経の前後5年間の合計10年間をいいます。

この時期に女性ホルモンの1つであるエストロゲンの分泌量が急激に減ってくることによりあらわれる
多種多様な症状を更年期症状といいます。
そのうち、日常生活に支障があるものを更年期障害といいます。

ABOUT 更年期症状とは

更年期にあらわれるのぼせ、異常発汗、イライラなどのさまざまな症状を更年期症状といいます。年齢とともにあらわれる症状が変わることもあります。異常発汗とは寒い時期でも汗が大量にでてくることで、のぼせなどとあわせてホットフラッシュともいいます。統計的に日本人によくみられるものとして、肩こり、疲れやすい、頭痛や腰痛、のぼせなどがあります。

更年期症状の発現頻度
更年期症状の発現頻度
日本女性医学学会、女性医学ガイドブック 更年期医療編2014年度版、金原出版

MECHANISM 更年期障害がおこるしくみ

更年期障害は、閉経にともない卵巣機能が低下し、エストロゲンの分泌量が急激に減少することでおこります。今までエストロゲンによって調節されていた体のさまざまな機能は、エストロゲンの分泌量が減ることで、うまくはたらかなくなります。またエストロゲンの低下を察知した脳は、卵巣に対してもっとエストロゲンを分泌するように指令を出します。 ところが、機能が低下した卵巣からは十分なエストロゲンが分泌されないため、ホルモンバランスの乱れが生じ、自律神経の調節がうまくいかなくなります。
これに、加齢にともなう身体的変化、心理的因子、家庭や職場・地域などの社会的因子が複合的に影響することで、更年期障害があらわれます。

更年期障害がおこるしくみ

ASSESSMENT 更年期障害の症状評価について

更年期症状評価表を用いて、更年期障害になっていないかどうか(診断)、治療の効果があったかどうか(判定)を見極めます。ご自身で自分の症状を客観的に把握し、受診時に正確に伝えることもできるので、活用することをおすすめします。うつ病などとの鑑別には、婦人科医などの判断により各種の心理テストも一緒に行うことがあります。

日本人女性の更年期症状評価表

日本人女性の更年期症状評価表
日本産科婦人科学会 生殖・内分泌委員会:日産婦誌, 53(5)883-888, 2001

TREATMENT 更年期障害の治療について

薬物療法には、エストロゲンの減少を補うホルモン補充療法や漢方療法などがあります。適切な薬物療法とともにカウンセリングなどの心理的なアプローチや、食事・運動といった生活習慣の改善を図ることも大切です。

薬物療法

◎ホルモン補充療法
(HRT:Hormone Replacement Therapy)
卵巣機能の低下のために不足するエストロゲンを、お薬で補う治療法です。のぼせ、発汗などの症状の改善を目的として、エストロゲン製剤の単独療法や、黄体ホルモン(プロゲスチン)製剤の併用があります。
◎漢方療法
漢方療法の基本的な考え方は、心身のバランスを整えることにより、さまざまな症状を改善することです。更年期障害は原因や症状が多様であり、いろいろな要因が複合しておこります。症状の緩和を目的としていくつかの漢方薬が用いられます。
◎その他の薬物療法
症状に応じて抗うつ薬、向精神薬などが用いられます。

カウンセリング・心理療法

多くの場合、加齢にともなう身体的変化、精神・心理的因子、家庭や職場・地域などの社会的因子が複合的に影響することで症状があらわれます。このため、適切な薬物療法とともにカウンセリングや心理療法が必要になる場合があります。

食事療法

バランスのとれた食事をとること、野菜・果物から必要な量のビタミン類をとることが大切です。また、大豆イソフラボンの含まれた食品も積極的にとりましょう。

運動療法

定期的な運動も大切です。運動は、ストレス解消に効果的であり、気持ちを前向きにする効果があります。

THERAPY ホルモン補充療法(HRT:Hormone Replacement Therapy)

更年期には卵巣のはたらきが弱まることでエストロゲンの分泌が低下し、多種多様な更年期症状があらわれます。これらを改善するための治療方法がホルモン補充療法です。
HRTに使われる女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲスチンがあります。
子宮をとった女性はエストロゲン単独療法(ET)、子宮のある女性はエストロゲン・プロゲスチン併用療法(EPT)を行います。

ETおよびEPTの投与方法
エストロゲン単独療法(ET)/エストロゲン・黄体ホルモン併用療法(EPT)
日本産科婦人科学会・日本女性医学学会. ホルモン補充療法ガイドライン 2017年度版より改変
  • 黄体ホルモンによる不安や抑うつなどの問題が回避できる。ただし、投与は子宮のない女性に限る。
  • 定期的な出血がみられる。また、持続的併用投与法に比べて、大脳血流量が増加し、脳機能に好影響を与える。
  • 投与初期に不正出血がみられるが、継続することによって減少する。

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