Q5 トレプロスト®注射液の持続皮下投与療法の、痛み・皮膚トラブル・注射部位の感染・注射部位以外の副作用には、どんな対処法があるの?
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●痛みへの対策
トレプロスト®注射液の注射部位の痛みに関しては、発現のしくみが明らかになっておらず、個人の感受性が大きく影響し、患者さんごとに有効な対策が異なると考えられています。そのため、医療従事者と相談しながら、ご自分に合った方法を見つけましょう。
痛みについては以下のようなことがいわれています。
- 注射部位の痛みは個人によっても、また、注射部位によっても異なります。注射部位は、個人によって、注射に適した部位と注射に適さない部位があります。
- 注射している部位が注射に適さない部位であると感じたら、すぐに注射部位を変更します。
- 新たな部位に注射を開始してから2~5日が最も強く痛みを感じるという報告があります。
- トレプロストの投与量が多くなるほど、注射部位の痛みが強くなるわけではないという報告があります。
- 注射部位の痛みに対しては、注射部位を冷やしたり、温めたり、薬剤(鎮痛剤など)を使用したりしますが、効果は患者さんによって異なります。
- 毎回の注射以降、何日目に痛みが発生したか、どの注射部位が痛くなかったか、どの薬剤が効果的であったかなどを把握するためにも、毎日日誌をつけましょう。
○痛みへの対処法
痛みの対処にはさまざまな方法があります。主治医や看護師と相談しながら、ご自分に合った方法を見つけましょう。
- 冷やす、温める
留置針を刺した場所を保冷剤などで冷やしたり、携帯カイロなどで温めたりすると痛みが和らぐ場合があります。 - 留置針を刺す場所を変える
我慢できない痛みが続く場合は、留置針を刺す場所を変えてください。場所を変えるときには、ドライカテーテル法を試してみることも一つです。 - その他
一般に、痛みを積極的に管理しようとすることやさまざまな方法を試すこと、人と会話をすることなどが痛みを和らげる効果があるともいわれています。
●注射部位の皮膚トラブルと対策
トレプロスト®注射液の持続皮下投与を受ける患者さんでは、注射部位に赤みやかぶれなどがでることがあります。このサイトでは、これらを皮膚トラブルと呼んでいます。
皮膚トラブルの原因としてトレプロストの薬剤そのものやテープの粘着剤への反応、針を刺すことや、テープをはがしたときの刺激などさまざまなものが考えられます。
皮膚トラブルは放っておくと治るまでに時間がかかるだけではなく、治ってからも跡が残ることがあります。毎日、注射部位の皮膚の状態を観察し、皮膚トラブルが起きた場合は早めに主治医や看護師などの医療従事者に相談しましょう。また、皮膚トラブルを起こさないための予防的ケアも行いましょう。
●主な注射部位の反応と対処法
○赤くなる(
発赤
)、腫れる
注射部位を変えたあとの数日間はトレプロストの薬剤による反応で、新たに留置した注射部位の周りの皮膚が赤くなったり、腫れたりすることがあります。
留置針の固定テープの補強やチューブの固定に使用しているテープによって赤みがでることもあります。
対処法
- トレプロストによる赤みや腫れの場合は、しばらくすると落ち着いてくる場合もあります。
- 留置針の固定テープの補強やチューブの固定に使用しているテープが原因の場合は、テープの種類を変えることや、テープをはがすときにゆっくりはがすことも効果的です。
- 注射部位を冷やしたり、温めたりすることもよいでしょう。
- 留置針を刺している場所が適していない可能性がありますので、刺す場所を変えるのもよいでしょう。
- 主治医に相談して軟膏や内服薬などの薬剤を使うことも可能です。
○硬くなる(
硬結
)
注射部位の皮膚が硬くなること(硬結)があります。皮膚が硬くなることで注入ポンプの閉塞アラームの原因になることがあります。
対処法
- 皮膚の硬い部分が大きくなったり、閉塞アラームが頻繁に鳴ったりする場合は、注射部位を変更してください。
- 主治医に相談して軟膏やクリームなどの薬剤を使うことも可能です。
○かゆみ
トレプロスト®注射液の薬剤による反応で、注射部位にかゆみを感じることがあります。また、留置針の固定テープやその補強、チューブの固定に使用しているテープによってかゆみ(かぶれ)がでることもあります。
対処法
- 留置針の固定テープの補強やチューブの固定に使用しているテープが原因の場合はテープの種類を変えることや、テープをはがすときに、ゆっくりはがすことも効果的です。
- 留置針の固定テープを貼る前に、皮膚保護剤などを使用することも効果的です。主治医や看護師に相談しましょう。
- 一度かゆみを感じてひっかいてしまうと湿疹ができ、さらにかゆみのためにひっかくという、かゆみの悪循環が起こってしまいます。ひっかかないようにしましょう。
- かゆみのある部位を冷やすことで効果がある場合もあります。
- かゆみが続く場合は、注射部位を変更してください。
- 主治医に相談して軟膏や内服薬などの薬剤を使うことも可能です。
○留置針の跡(色素沈着)
留置針の跡は、個人差はありますが消えないで残ることもあります。
対処法
- 主治医に相談して軟膏やクリームなどの薬剤を使うことも可能です。
●皮膚トラブルの予防
日頃から皮膚のケアを行うことで、皮膚を健康に保ち、皮膚トラブルを起こしにくくすることができます。留置針を刺していないところ、留置針を抜いたところを含めた皮膚のケアをしておきましょう。次のようなことを注意してください。
- 清潔に保ちましょう
皮膚には、汗や皮脂、古くなった角質などの分泌物や埃、ちりなど外部からの刺激があり、皮膚の新陳代謝のサイクルを妨げる原因になっています。皮膚を清潔に保つことは、皮膚トラブルの予防に有効です。 - 保湿を心がけましょう
皮膚が乾燥すると皮膚トラブルを起こしやすくなるので、皮膚そのものの機能を保つために、保湿を心がけましょう。
保湿剤にはさまざまな種類がありますが、刺激のある成分は避け、肌になじみやすい成分を選びましょう。
テープを貼る前に保湿剤を塗りすぎるとテープがつきにくくなるので、塗りすぎには注意しましょう。 - 刺激を避けましょう
注射部位が圧迫されたり、擦れたりすると皮膚トラブルの原因になるので、注射部位は大切に扱ってください。注射部位を選択する際は動きが多い場所や衣服の影響を受けやすい場所などは避けてください。紫外線も皮膚への刺激となるため、日焼けなどにも注意しましょう。テープの糊が残っている場合には、消毒用エタノールや専用のリムーバーを用いて、こすらずに取ってください。 - 毎日、注射部位を観察しましょう
皮膚トラブルは、早めの対処が大切です。皮膚の異常や皮膚トラブルに早く気付き、処置ができるよう、毎日注射部位を観察しましょう。
●注射部位の感染
○注意する症状と対処法
次のような症状がある場合は、注射部位の感染の可能性があります。
- 注射部位の赤みや腫れが長期間続いている
- 注射部位の痛みがかなり強く、長期間続いている
- 注射部位から膿が出ている
- 注射部位から出血している
対処法
- 留置針を抜き、注射部位を変えてください。
- 症状が続く場合は、医療機関に連絡し主治医の指示に従ってください。
○注射部位の感染予防
感染を起こさないために、薬剤やポンプの取り扱い、注射部位の管理にはふだんから細心の注意が必要です。以下のことに気をつけてください。
- 薬剤の調製に必要なものは、清潔な場所で保管しましょう。
- 薬剤の調製をするときには必ず手洗いをし、清潔な操作で行いましょう。
- 注射部位とその周囲は清潔に保ち、濡れたままの状態や蒸れた状態が続かないようにしましょう。
●その他の副作用
トレプロスト®注射液の投与中、特に増量中に、次のような副作用が現れることがあります。症状が強い場合は、主治医に相談してください。
副作用 | 対処・注意すべきこと |
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頭痛 | 症状が続く場合は主治医に相談してください。市販の鎮痛薬を服用する場合は主治医に確認してから服用してください。 |
下痢 | 症状が続く場合は主治医に相談してください。市販の下痢止めを服用する場合は主治医に確認してから服用してください。 |
皮膚の赤み、ほてり | 直射日光を避けてください。 |
あごの痛み | やわらかい食事をとるようにしてください。冷たいものや熱いものは刺激になるので、適温にしてから食べるようにしてください。 |
むくみ、だるさ | 症状が強い場合は、主治医に相談してください。 |
吐き気 | 症状が続く場合は、主治医に相談してください。 |
めまい、血圧低下 | 急に立ち上がることを避け、しばらく安静にしてください。 症状が続く場合は、主治医に相談してください。 |
足の底の痛み | 症状が強い場合は、主治医に相談してください。 |