コロナ禍以降、眠れない時の睡眠導入方法
作成日:2021.09.10
コロナ禍で生活リズムが変化し、睡眠に変化が出てしまった方も多いのではないでしょうか。家にいる時間が増えてつい夜更かししてしまう、身体を動かすことがなくなりぐっすり眠れない、朝はギリギリまで寝るようになり生活リズムが夜型になった、考えすぎて慢性的に不安になってしまい寝付けない・途中で起きるなど、さまざまな悩みを抱える方が増えてきているようです。なぜ睡眠が乱れるのか、どのようにすれば睡眠の乱れを防げるのかについて解説していきます。
1. コロナ禍以降、眠いのに眠れない?
コロナ禍となり、不眠に悩む方も増えているのではないでしょうか。辛い不眠がなぜ起こるのか、なぜこのタイミングで増えているのか、考えられる原因を解説します。
1.1. ストレスや不安を抱えている
コロナ禍で生活習慣や職場環境が変化したり、将来の見通しが立たなくなったりと、さまざまな変化があった方も多いのではないでしょうか。このような状況ではストレスや不安が溜まりやすくなっていると考えられます。その場合、仮に体が疲れていたとしても、脳が興奮状態となり、眠れなくなってしまいます。そして疲れた状態で日常生活を送ることでさらに疲労やストレスが溜まり不眠になる、という悪循環に陥ることがあります。
また、身体を動かす機会が減ったことで、疲れていないから眠れない、もしくは気分転換できないためストレスを感じ眠れない場合があります。運動は脳を活性化させ、気持ちをリフレッシュさせる効果があります。もともと身体活動が多い人はうつの割合が低いという結果もあるほど、運動とメンタルヘルスの間には密接な関係があります。
生活の変化や将来の不安、運動不足など、コロナ禍での変化は、不眠を引き起こす可能性があると考えることもできます。
2. 医学的に眠れない理由
ストレスや不安以外にも、不眠の原因になりうる要素はたくさんあります。一つ一つ見ていきましょう。
2.1. 身体的症状
病気による身体的な症状によって眠れない場合があります。例えば、頻尿を起こす腎臓や前立腺の病気、痛みを起こす関節リウマチや怪我、かゆみを起こすアレルギー疾患、うつ病などのこころの病など、不眠の原因となる病気はたくさんあります。他にも、睡眠時無呼吸症候群やレストレスレッグス症候群といった、睡眠を直接妨げる病気もあります。身体的な症状の場合、まずは病気を治療することが不眠の解決につながります。健康診断や日々の生活で思いあたる節がある場合は二次的に不眠になっている可能性があるので、ぜひ一度医師に相談してみてはいかがでしょうか?
2.2. 生活習慣
不眠の原因として生活習慣は大きな要素を占めます。例えば、海外旅行の際、時差ボケでしばらく眠れなくなったり、夜更かしや徹夜を続けた後、朝起きられなくなったりといった経験がある方もいるのではないでしょうか。一度乱れた生活習慣は不眠の原因となり、そして、体内時計が乱れることでさらに悪化していきます。現代は24時間営業の店も増え、生活リズムが乱れやすい状況にあります。それに加えてコロナ禍で、例えば在宅勤務やリモート授業になったから朝ギリギリまで寝るなどのリズムが乱れた生活を続けると、不眠が余計ひどくなると考えられます。不眠の背景には日々の生活習慣がある場合が多いので、ぜひ一度、見直してみてはいかがでしょうか。
2.3. ブルーライトなどの刺激
パソコンやスマホ画面から出るブルーライト、コーヒー・紅茶に含まれるカフェイン、タバコに含まれるニコチンなど日常生活の刺激が不眠の原因となることが知られてきました。在宅勤務、オンライン会議、オンライン授業など画面を見る機会が増えた人も多いでしょうし、ついストレスでコーヒーを飲みすぎてしまった、ついついタバコを吸ってしまう、といった方も多いのではないでしょうか。そのような習慣・無意識なうちの刺激が不眠の原因となる可能性があります。
3. 眠れない原因診断
眠れない原因を特定するのはなかなか難しいです。とはいえ、上記で述べたような不眠の原因がないか、一つ一つ確認してみてはどうでしょうか。もし気になる症状があるなら病院で相談する、不安やストレスが溜まっているようならカウンセリングを検討したり、メンタルクリニック受診を検討したりするのがおすすめです。
4. リラックス方法
ストレスや不安は不眠の原因になります。気持ちをやわらげてリラックスする方法をご紹介します。
4.1. リラックスのツボを押す
東洋医学では、ツボを用いて身体の調子を整える治療が行われてきました。ツボを押すことで生命のエネルギーの流れがスムーズになり、身体のバランスが保たれるとされています。
快眠のツボ押しの方法と特に不眠に効くと言われる二つのツボを紹介します。
快眠のツボ押しの方法
快眠のツボ押しは、就寝する30分~1時間前に、ちょっと気持ちいい程度の優しい押し方で約10回繰り返します。深呼吸を意識して息を吐きながらツボを押し、息を吸いながら圧迫を緩めることを意識しましょう。
快眠のツボ
一つは労宮(ろうきゅう)と呼ばれる手のツボで、手を軽く握った時、人差し指と中指の先端の中間にあるツボになります。このツボは心を静めることができるとされています。
もう一つがかかとの中央にある失眠(しつみん)というツボで、不眠緩和の代表的なツボになります。ツボ押しだけでなく、湯たんぽなどで軽く温めるのも効果的とされています。
他にも快眠につながるとされるツボは色々あるので、興味のある方は調べてみてください。
4.2. 半身浴をする
38~40度の、熱すぎないお湯にみぞおちまでつかる半身浴は安眠に効果的と言われています。下半身をぬるめのお湯で温めることで、リラックスを導く副交感神経が優位になるとされているからです。なお、熱いお湯に肩までつかる全身浴では、刺激が強すぎ、交感神経が優位になるため、体温や心拍数も上がり、安眠には逆効果となります。ですので、寝る前のお風呂(入浴)を半身浴にしてみてはいかがでしょうか。また、寝る直前のお風呂は快眠を妨げますので、寝る1~2時間前が理想的と考えられます。
4.3. 筋弛緩法をする
筋弛緩法とは1930年代にアメリカで生み出されたとされるリラクゼーション法で、不安やストレスなどによってもたらされる筋肉の緊張状態を解消し、筋肉の完全な弛緩を誘導します。身体の緊張がほぐれることでリラックスでき、スムーズな入眠や睡眠の質向上につながります。睡眠の質が上がればイライラや漠然とした不安、気分の落ち込みなどが解消され、さらに睡眠の質が上がるという好循環になるでしょう。
この筋弛緩法というのは、椅子に腰かけ、背もたれに背中をつけずに浅く座って、腕、足、お腹など体の各部の筋肉に対し、順々に力を入れ、10秒程度緊張させた後、15~20秒脱力するという方法で行います。まずは力を入れて筋肉を緊張させ、次にスーッと力を抜くことで、身体の緊張がほぐれていきます。いずれは意識して体の力を抜けるようになり、緊張しにくくなるでしょう。
4.4. 深呼吸をする
呼吸を整えることは自律神経を整えることにつながります。具体的には、お腹を膨らませたりへこませたりする腹式呼吸が副交感神経を高めて、心身をリラックスさせる効果があるとされています。この時のポイントは呼吸を一定にすることです。一定のリズムで、しっかり吸ってしっかり吐くを繰り返すことで、緊張がほぐれ、快眠につながります。
ここでは基本的な2つの呼吸法についてご紹介します。
腹式呼吸
- お腹に力を入れ、ゆっくり息を吐き、吐ききったら2秒息を止めます。
- お腹の力を抜きながら、ゆっくり鼻から息を吸い込み、十分吸い込んだら、3秒息を止めます。
- ゆっくり口から息を吐き、吐ききったら2秒間息を止めます。
- お腹の力を抜き、背筋を伸ばして息を吸い込みます。
※1~4までを1サイクルとして2~3サイクル行いましょう。
ゆったり呼吸
- 6秒かけて息を細めにゆっくりと吐く。
- 3秒かけて精一杯息を吸う。
※難しい場合は4秒吐いて、2秒数吸うだけでも大丈夫です。
5. 眠る前にやるべきでないこと
ここまで眠れない理由やリラックス法を紹介してきましたが、ここでは具体的な生活習慣の注意点と改善策をご紹介します。
5.1. スマホやパソコンを見る
スマホやパソコンの画面から出るブルーライトは不眠の原因のひとつとなります。具体的には、ブルーライトを浴びることで、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌が抑制されると言われています。夕方以降、ブルーライトをカットするモードにして使用し、寝る2~3時間前からスマホやパソコンの使用を控えるようにしましょう。
5.2. 眠る直前の熱いお風呂
熱いお風呂は交感神経を優位にし、眠りの質を低下させることにつながります。また、仮に、半身浴のような入浴法をしたとしても、お風呂から上がった直後は体温が上がっており、眠りにくい状態になっています。ですから理想的には寝る1~2時間前に、熱すぎないお湯で、出来れば半身浴のような方法での入浴が望まれます。
5.3. 眠る直前の食事
食事をとると眠くなるという方は多いのではないでしょうか。しかし、寝る前の食事は、確かに眠気を誘発するものの、睡眠の質に対してはむしろ悪影響となります。食事による眠気の原因は、レプチンといういわゆる満腹ホルモンが関わっています。しかし、このホルモンの役割は、睡眠の誘導ではなく、食事の消化のために胃腸を働かせることです。すなわち、眠気を感じているものの、消化管は忙しく動いている状態となり、結局消化器官からまだ働いているという信号が脳へ送られることになり、睡眠が妨げられるのです。そのため、夕飯は就寝の3時間前までにすませておくことが望ましいです。
6. 寝つきを良くするためにできること
寝つきを良くするためにおすすめの生活習慣についてご紹介します。
6.1. 生活リズムを作る
夜になったら眠気が起こり、朝になったら目が覚める、という睡眠覚醒の制御の一つの機構として、体内時計があります。生活が乱れると、体内時計が崩れる、逆の言い方をすれば、毎日ほぼ同じ時刻に起床し、就寝することで体内時計が一定のリズムを保つようになります。体内時計を整えることは質の良い眠りへの第一歩ですので、不眠にお困りの方は、ぜひ生活リズムを整えることをおすすめします。
6.2. 朝日を浴びる
太陽の光には体内時計を調整する働きがあるとされています。太陽の光が目の網膜から頭に入り、脳に働きかけるのです。寝起きに光を浴びてから約14時間以降に眠気が生じるとされているため、朝日を浴びることで、体内時計が調整され、良い睡眠につながるのです。
6.3. 休日も朝は起きる
体内時計の調整は良い睡眠の第一歩です。逆に、体内時計を乱すことは不眠につながります。例えば、休日だからといって朝遅くまで寝ていると、それ自体が体内時計を乱すと共に、朝日を浴びないことも体内時計を乱すのでますます悪循環となります。ですので、休日も寝だめのし過ぎは避け、できるだけ平日と同じ時間に起きるように心がけて下さい。どうしても睡眠不足が続いている方でも、体内時計を乱さないために、仮に起床時刻を遅らせたとしても、1~2時間までにとどめましょう。
7. まとめ
今後もコロナ禍で眠りが気になるという方は増えていくと予想されます。また、深刻な睡眠障害などでないため、ついつい放置してしまっているような「不眠症予備軍」の増加も社会問題化してくるかもしれません。
ちょっと寝つきが悪い、短時間で目覚めてしまうなど睡眠が気になる方は、放置せずに、その原因を考えてみましょう。
自分で試せる睡眠対策は今回ご紹介した以外にもたくさんあります。
それらを少しずつ自分の生活に取り入れることで、睡眠改善の傾向があれば、自分の不眠の原因や自分に合った改善法が見えてくるかもしれません。改善の見込みがなく、こころに不調を感じた場合は、一度、メンタルクリニックや精神科、心療内科など、医師に相談することも一つの手段です。
監修
慶應義塾大学病院 三村 將 先生
はれそら監修医師紹介ページ
本サイトに掲載された健康情報は医師や専門家の監修したものですが、啓発を目的としたものであり、医療関係者に対する相談に代わるものではありません。治療については、個々の特性を考慮し医師等の医療関係者と相談の上決定してください。