はれそら|持田製薬株式会社

第1回 現代社会における睡眠不足の問題と不眠改善に必要な『睡眠衛生の見直し』

第1回 現代社会における睡眠不足の問題と不眠改善に必要な『睡眠衛生の見直し』

作成日:2023.08.17

1)24時間型社会が睡眠に及ぼす影響

インターネットやスマートフォンなどによる高度情報化、活動のグローバル化などにより、昼夜の区別なく活動する24時間型社会が定着し、いまや“24時間7日間眠らない”日々に翻弄されるかのように、たくさんの人たちが不眠に悩んでいます1-2)

1) 井上雄一, 岡島義 編. 不眠の科学. 朝倉書店, 2012, p13-20.
2) Wickwire EM, et al. Chest. 2017; 151(5): 1156-1172.

危機的な状況に直面する私たちの“生体リズム”

私たち人間は古来、潮の満ち引きや太陽の光など、自然環境の周期的なリズムとともに生きてきました。その周期に適応するために、「昼間は活動して夜に休む」という約24時間周期で繰り返される生体リズム(概日リズム)を長い時間をかけて獲得し、それが遺伝的に定着したと考えられています。
ところが、19世紀に電灯が発明されて人工的な光が広く普及すると、夜の闇は次第に失われ、人間の活動時間は昼だけでなく夜間にも及びはじめます。そして、インターネットに代表される高度情報化や活動のグローバル化が浸透した現在、もはや活動時間に昼夜の区別はなくなり、これまでの「昼間は活動して夜に休む」という概日リズムでは社会生活の活動リズムに対応しきれない状況が生じているのです。

実はこの概日リズムこそ、睡眠のメカニズムにおいて、とても大切な役割を果たしています。そのため、概日リズムをめぐる現在の危機的な状況下では、不眠をはじめ睡眠の問題に悩む人が少なくないのです。

そもそも睡眠はどのようなメカニズムで起こる?

睡眠のメカニズムには、2つのシステムが関わっていることが知られています。
1つは、先ほどお話しした概日リズムによってコントロールされるシステム(体内時計機構)です。毎日決まった時間にさまざまなホルモンが分泌されたり、体温が上昇したり下降したり、それらの影響により私たちは、夜になると眠くなり、朝になれば目覚めます。
もう1つは、日中の活動による心身の疲労を回復させるシステム(恒常性維持機構)です。時間の経過とともに疲れがたまると眠くなり、睡眠により回復すれば目覚めます。
この2つのシステムの相互関係に制御されて、私たちは毎日睡眠と覚醒を繰り返していると考えられています。両方のシステムがうまく働き、連動することで、健康な睡眠・覚醒を保つことができますが、どちらか一方が乱れれば、毎日の睡眠・覚醒にさまざまな問題が生じてきます。

たとえば、昼夜のメリハリが失われた24時間型社会では概日リズムが乱れて睡眠時刻がずれ込み、夜眠れずに朝寝坊を繰り返すようになります。また、昼間の活動量が少ないと疲れがたまらず、睡眠の必要性が低下して、うまく寝つけない、眠りが浅くなるなどの不眠症状が現れてくるのです。

「光」による体内時計のリセット機能

概日リズムをコントロールしているのは脳に備わる「体内時計」ですが、体内時計の周期は24時間より少し長いことが知られています。それを1日24時間の昼夜のリズムに同調させるために重要な役割を果たしているのが「光」です。私たちは毎朝起床後に太陽の光を浴びることで体内時計をリセットして、1日24時間の社会生活に適応しているのです。光は体内時計の調節になくてはならないものと言えるかもしれません。

2)不眠のこころやからだへの影響

世界的にみて⽇本は睡眠時間が短い国の1つで3)、ここ50年間にわたって短縮の一途をたどっていることが知られています4)。さらに、成人の約2割が不眠症状を訴えるなど5)、睡眠の質の低下が指摘されています。誰もが経験しうる不眠について、その原因や健康への影響を紹介します。

3) 平成26年版厚生労働白書 ~健康・予防元年~. 睡眠時間の国際比較
https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kousei/14/backdata/1-2-3-22.html(2022年3月1日閲覧)
4) NHK放送文化研究所世論調査部. 2010年国民生活時間調査報告書. p47-48. NHK放送文化研究所, 平成23年2月.
5) Kim K, et al. Sleep. 2000; 23(1): 41-47.

不眠のタイプと原因はさまざま

不眠にはいくつかのタイプがあります。寝つきが悪い「入眠困難」、朝までに何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」、普段より朝早く眼が覚めてしまう「早朝覚醒」、睡眠時間は十分なのに深く眠った気がしない「熟眠障害」の4つのタイプに分けられます。
なぜ不眠が起こるのかという原因もさまざまです。不眠の原因としては、かゆみや痛み、咳・発作、頻尿などの「身体疾患に伴う症状」、室内温度や明るさ、騒音などの「生活環境」、アルコールやカフェイン、ニコチンなどの「刺激物」、24時間型社会に顕著な「生活リズムの乱れ」、そして「ストレス・不安・緊張」などが知られています。

不眠は長引き、慢性化しやすいことに注意が必要

「寝たいのに眠れない」夜を誰しも一度は経験したことがあるものです。でも多くの場合、数日あるいは数週間もすれば眠れるようになります。ところが、眠れない夜が続くと、不眠を回避しようとするあまり、かえって不眠が悪化・慢性化する悪循環に陥ることが知られています。
たとえば、何らかのストレスがきっかけで一過性に不眠を経験した後に、眠れない日が続くとベッドと不眠が関連づけられてしまい、ベッドに横になると目が冴えてしまうという反応が習慣化して、当初のストレスはなくなっているにもかかわらず、眠れなくなってしまうということが起こります。そうなる前に、自分の睡眠や日常生活をよく見直して、改善に取り組むことが大切です。

不眠は脳卒中や心筋梗塞、うつ病などさまざまな疾患の発症につながることも

不眠が心身にどのような影響を与えるかを知るには、健康な人を数日間完全に眠らせない(全断眠)、あるいは部分的に睡眠を妨げる(部分断眠)実験が役に立ちます。
これまでたくさんの実験が行われた結果、長時間眠らずにいると集中力・記憶力の低下、抑うつなどがみられ、血圧上昇や耐糖能への影響が生じてくることが明らかにされています6)
こうした影響はさらに、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化症や高血圧、肥満などの生活習慣病、抑うつなどの精神系のトラブル、免疫力の低下の可能性など、思いがけないほどさまざまな心身のトラブルにつながることが数々の調査で明らかにされています6-8)

6) 井上雄一, 岡島義 編. 不眠の科学. 朝倉書店, 2012, p52-60.
7) Vgontzas AN, et al. Sleep. 2009; 32(4): 491-497.
8) Chandola T, et al. Sleep. 2010; 33(6): 739-744.

知っていますか? 睡眠時間に関する豆知識
  • 必要な睡眠時間には個人差がある。朝すっきりと目覚めることができ、日中に強い眠気を感じることなく、疲労が蓄積されずに生活ができていれば、適切な睡眠時間がとれていると考えてよい。
  • 令和元年国民健康・栄養調査では、成人の1日の平均睡眠時間は「6時間以上7時間未満」の割合がもっとも高く、男性 32.7%、女性 36.2%であった9)
  • 睡眠時間が4時間以下に減少すると、日中の眠気は急激に強くなるとされている10)
  • 1日1時間程度の睡眠不足であっても、それが続けば蓄積して日中の精神機能に大きく影響する10)
  • 体が必要としている時間以上の睡眠をとることはできない。

9) 厚生労働省. 令和元年国民健康・栄養調査結果の概要
10) 睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会 内山真編. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版. じほう, 2019, p166.

3)不眠の改善に“睡眠衛生”を見直そう!11-13)

不眠を解消するには、まず睡眠衛生を改善することが大切です。睡眠衛生とは、睡眠に関する正しい知識をもち、睡眠に関連する問題を解決して、質の良い睡眠を十分にとれるように入眠法や生活環境を整えることを意味します。次にあげる睡眠衛生を改善することで、多くの場合、睡眠薬に頼らずに不眠を解消できることがわかっています。

概日リズムの維持・強化

不眠を訴える人では、体内時計によって刻まれる約24時間周期のリズム(概日リズム)の乱れが認められます。1日約24時間の概日リズムに合わせた生活スケジュールで、規則正しく、メリハリのある毎日を送ることが大切です。

生活習慣の見直し

1週間単位で生活リズムを見直し、睡眠不足に注意します。食事や入浴、運動は睡眠への影響を考慮して、よい睡眠につながるよう心がけましょう。また、自分流のストレス解消法をみつけて、ストレスをためこまないようにすることも大切です。

  • 食事:入眠時に胃腸が活動していると睡眠が妨げられるので、夕食は寝る3時間以上前にするとよいでしょう。
  • 入浴:体温が下降するタイミングに入眠しやすく、体温が上昇するタイミングでは入眠しにくいことが明らかにされています。就寝1~2時間前に入浴して体温を上げておくとよいでしょう。
  • 運動:昼間から夕方の適度な運動は寝つきをよくし、深い睡眠につながります。夜の激しい運動は体温を上昇させ入眠を妨げます。

嗜好品には注意する

アルコール、カフェイン、ニコチンには睡眠を妨げる作用があるので、不眠の原因となる可能性があります。

  • アルコール:寝る前のお酒は寝つきをよくすると思われがちですが、睡眠後半の眠りが浅くなるため、中途覚醒や早朝覚醒の原因になります。
  • カフェイン:覚醒作用や利尿作用が睡眠を妨げるので就寝前4時間の摂取は避けます。
  • ニコチン:覚醒作用が数時間継続するので、夜間の喫煙は避けます。

睡眠環境を快適に

明るさ、音、温度、湿度など、さまざまな環境要因によって睡眠が障害される可能性があります。
個人差はありますが、睡眠のための適温は20℃前後で、湿度は40~70%くらいに保つのがよいとされています。ベッド・布団・枕・照明などにも気を配り、自分に合ったものを選ぶようにします。

睡眠にこだわりすぎない

「今日こそしっかり眠らなくては」「●時間は眠りたい」などと睡眠にこだわりすぎると、緊張してしまい、かえって寝つけなくなってしまいかねません。ぬるめのお湯でゆっくり入浴したり、音楽を聴いたり読書をしたり、好きな香りを楽しんだり、自分に合ったリラックス法で緊張をほぐすことが大切です。

よりよい睡眠のために大切なのは「朝の光」

体内時計をリセットするために必要な光ですが、「朝の光」と「夜の光」では睡眠に異なる影響をもたらします。朝の光を浴びると体内時計が前進して、夜は朝の光を浴びない場合より早く眠くなり、寝つきもよく、睡眠も深くなります。一方、夜寝る前にPCやスマホなどを使って強い光を浴びると体内時計が遅れて寝つきが悪くなり、早起きもつらくなるので注意が必要です。

〔コラム〕 睡眠衛生の改善ポイント

ゆっくり深く眠るためのコツを伝授します。ぜひトライしてみてください。

  • 規則正しい生体リズムと寝る前のリラックスを心がけよう
  • 毎日同じ時間に起床して、太陽の光を浴びる
  • 就寝1~2時間前にぬるめの温度で入浴する
  • 昼寝をするなら午後3時までに20~30分程度
  • カフェイン摂取は就寝4時間前まで
  • 夜中に目が覚めても時計を確認しない
  • 入眠前にテレビを観たりスマホを操作したりしない

11) 睡眠障害の診断・治療ガイドライン研究会 内山真編. 睡眠障害の対応と治療ガイドライン第3版. じほう, 2019, p139-145.
12) 井上雄一, 岡島義 編. 不眠の科学. 朝倉書店, 2012, p107-115.
13) 厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト. e-ヘルスネット[情報提供] 不眠症.
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-02-001.html(2022年3月31日閲覧)

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