Chapter 4 治療のこと

【監修】 杏林大学医学部 消化器内科学 教授 久松 理一 先生

主な内科的治療としては、「薬物療法」や「栄養療法」があります。治療をきちんと続けて解を長期間維持することで、クローン病の進行や腸管合併症などを防ぐことが期待されます
主な内科的治療としては、「薬物療法」や「栄養療法」があります。
治療をきちんと続けて解を長期間維持することで、クローン病の進行や腸管合併症などを防ぐことが期待されます
主な内科的治療としては、「薬物療法」や「栄養療法」があります。治療をきちんと続けて解を長期間維持することで、クローン病の進行や腸管合併症などを防ぐことが期待されます

主な内科的治療としては、
「薬物療法」や「栄養療法」があります。

治療をきちんと続けて寛解を長期間維持することで、
クローン病の進行や腸管合併症などを防ぐことが
期待されます

クローン病の治療の種類と治療目標イメージ図

クローン病の治療には、腸管の炎症を抑えて症状をやわらげ、寛解へと導く寛解導入療法と、寛解を長期間維持して再燃を防ぐ寛解維持療法があります。

治療をきちんと続けて寛解を長期間維持することで、クローン病の進行を抑え、QOLを低下させる腸管合併症などの発症を防ぐことが期待されます。

クローン病の治療の種類と治療目標 クローン病の治療の種類と治療目標
  • 日比 紀文 ほか 編 『IBDを日常診療で診る』 羊土社 2017年 p45を参考に作図

薬物療法

クローン病のお薬の中には、免疫機能を抑えるものがあるので、感染症などに注意しながら薬物療法が行われます。

薬物療法 薬物療法
5-ASA製剤
  • 腸管の炎症を抑えるお薬
  • 寛解導入療法と寛解維持療法で使用 5-ASA:5-アミノサリチル酸
ステロイド
  • 活動期の炎症を強力に抑えるお薬
  • 副作用を防ぐ観点から、必要な期間に必要な量だけ使用
  • 寛解導入療法のみに使用
免疫調節薬
  • 過剰になっている免疫反応を抑えるお薬
抗体製剤
  • 炎症を引き起こす生体物質が過剰に作られるのを抑えるお薬や、腸に炎症細胞が集まるのを抑えるお薬などがある
  • 遺伝子組換え技術などによって作られたお薬で、
    「バイオ医薬品」「生物学的製剤」ともよばれている
  • 寛解導入療法と寛解維持療法で使用
抗菌薬
  • 肛門部に病変がある場合に使用されることがある
薬物療法 薬物療法
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Columnバイオ医薬品とバイオシミラー(バイオ後続品)

国内で発売されている「バイオ医薬品」の中には、
それらのお薬と同等/同質の品質、有効性、安全性が臨床試験で確認され、
それらと“類似”のもの〔シミラー(similar)〕として後から承認された
「バイオシミラー(バイオ後続品)」というお薬があります。

バイオシミラーは、主に先行バイオ医薬品とは別の製薬会社で開発・製造されますが、
バイオシミラーの承認後も、先行品と同様、
安全性の確認のためにきちんと調査が行われます。

クローン病の抗体製剤(→上記表)の中には、
バイオシミラーがあるお薬もあるため、
患者さんの経済負担が軽減される可能性注)があります。

  • 注)各種制度の利用などにより、バイオシミラーを使用しても経済負担が軽減されない場合もあります。
バイオ医薬品とバイオシミラー(バイオ後続品) バイオ医薬品とバイオシミラー(バイオ後続品)

“類似”のもの

  • (同等/同質の品質、有効性、安全性)

栄養療法

栄養状態の改善や腸管の安静、腸管の炎症を抑えるために行われます。

  • 経腸栄養療法

    鼻から胃/十二指腸までチューブを通して、栄養剤を注入します。
    なお、経口摂取が可能な場合は、チューブを用いずそのまま経口で服用することも可能です。

  • 完全静脈栄養療法

    絶食下で、静脈から栄養分を投与します。

栄養療法
【対象】 症状が非常に強い場合、腸管に高度の狭窄がある場合、
小腸の広い範囲に病変がある場合 など

薬物療法や栄養療法では効果不十分な場合などに、「血球成分除去療法」が検討されます
薬物療法や栄養療法では効果不十分な場合などに、「血球成分除去療法」が検討されます
薬物療法や栄養療法では効果不十分な場合などに、「血球成分除去療法」が検討されます
薬物療法や栄養療法では効果不十分な場合などに、
「血球成分除去療法」が検討されます

血球成分除去療法

既存の薬物療法や栄養療法では効果が得られない場合や、これらの治療が行えない場合で、
大腸の病変による症状が残っている場合に検討されます。

血液を一旦体内から取り出し、特殊な筒(カラム)に通すことで、特定の血液成分を除去し、
再び体内に戻す治療法です。

血球成分除去療法

穿孔や腸閉塞など、腸管合併症などがある場合は、「手術療法」が検討されます
穿孔や腸閉塞など、腸管合併症などがある場合は、「手術療法」が検討されます
穿孔や腸閉塞など、腸管合併症などがある場合は、「手術療法」が検討されます
穿孔や腸閉塞など、腸管合併症などがある場合は、
「手術療法」が検討されます

手術療法が必要となる場合

クローン病患者さんにおいて、下表のような腸管合併症がある場合には、内科的治療の効果が得られにくいため、手術療法が検討されます。

緊急で
手術が必要となる場合
患者さんの状態を考慮して
手術が行われる場合
  • 穿孔:腸管に孔があいた状態

  • 大量の出血

  • 中毒性巨大結腸症:

    大腸の動きが止まってガスなどがたまり、腸がふくらんで巨大化して中毒様症状があらわれた状態

  • 腸閉塞:腸管がつまった状態

  • 膿瘍:膿がたまった状態

  • がんの合併

  • 難治性の狭窄
  • 難治性の肛門部病変
  • 瘻孔(内瘻、外瘻)
  • 内科的治療の無効例 など
  • 日比 紀文 監修 『チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト』 羊土社 2016年 p215より改変

手術療法の実施時期

抗体製剤(バイオ医薬品)が登場(→上記「薬物療法」参照)する前までは、手術療法後の再燃を抑える有効な治療法がほとんどなかったため、「手術療法はできるだけ回避する」ということがいわれていました。

しかし現在では、「早めに手術療法を行い、その次の手術を行わなくてもすむよう、内科的治療でコントロールする」という治療方針に変わりつつあります。

手術療法の実施時期

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