【質問1】子宮内膜症にかかる人は増えていますか?増えているとしたら、なぜでしょう?また、今後、さらに患者数は増えていくでしょうか?
子宮内膜症にかかる女性は10人に1人といわれていますが、日々患者さんを診察しているなかで増えているという印象はあります。平成9年に厚生労働省の研究班が全国におよそ13万人の患者が治療を受けているという推計を出しましたが、その後に実際に増えているかどうかは、同様の調査を行わないとわかりません。イギリスなど海外では子宮内膜症と診断されて診療を受ける患者さんが増えているというデータも出ています。
患者数の増加には、女性のライフスタイルの変化が大きく影響していると考えられていますが、子宮内膜症という病気に関する知識が、医師や患者さんの間で普及して、治療を受ける機会が増えたこともあると思います。
子宮内膜症は、月経血が月経のたびに子宮、卵管を通ってお腹の中に逆流することが原因と考えられています。時代とともに女性のライフスタイルが変化して、出産回数は激減し、初産年齢の高齢化が進みました。この2つによって、現代女性が生涯に経験する月経回数は増えたといわれます。たとえば明治時代の女性であれば、初経とほぼ同時に結婚し、妊娠、出産、授乳を繰り返して何人もの子どもを育てていたわけです。ですから明治時代の女性が一生涯に経験した月経の回数は、結婚年齢、出産年齢の高齢化で出産回数が少なくなった現代女性に比べて少ないはずです。それだけ現代女性が子宮内膜症にかかるリスクも高くなるわけです。
ただし、月経血の逆流は90%以上の人に起こっているので、月経が繰り返されたからといって、すべての人が子宮内膜症にかかるわけではありません。なぜ子宮内膜症になる人とそうでない人がいるのかについては不明です。環境ホルモンや免疫の問題などが指摘されていますが、はっきりとしたデータは出ていないのが現状です。
このように、子宮内膜症は現代病ともいえますが、患者数の増加はそろそろ頭打ちなのではないかと思います。希望的観測にはなりますが、少子化のカーブも底を打っていますし、これ以上は進まないのではないかと。出産年齢の高齢化も、もうぎりぎりまできていますから、生物学的にさらに遅くすることができなくなっています。これらの理由から、今後もさらに同じスピードで子宮内膜症にかかる人が増えていくとは考えられないのです。
さらに、多くの女性が低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤をもっと早い段階から使うようになれば、子宮内膜症の患者数の増加にも、より歯止めがかかると思います。月経痛の強い機能性月経困難症の人に低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤を使うと、子宮内膜症への進展阻止につながる可能性があるからです。
将来的なリスクを考えて、より多くの女性が低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤を使うようになれば、子宮内膜症でつらい思いをする人は減るのではないかと思います。