(福)恩賜財団母子愛育会 総合母子保健センター 愛育病院 百枝先生に聞く!子宮内膜症

【質問2】治療法を選択するときに、症状の重症度、進行度だけではなく、患者自身のライフスタイルや今後の人生設計を考える必要があると言われるのは、なぜですか?

子宮内膜症で問題になるのは、(1)痛み(2)不妊(3)がん化の3つです。それぞれの女性のライフステージで、何が問題になるのかが異なり、それによって治療方針が変わってきます。

生物学的に考えた場合、人生の大きなイベントといえば妊娠、出産です。子宮内膜症の薬物療法は、鎮痛薬を除けば、ほとんどのホルモン療法が治療中は妊娠できません。もし、できるだけ早く妊娠したい場合には、年齢にもよりますが、手術を優先して考えます。手術をしてみて、両側の卵管が癒着している場合などには、手術後の自然妊娠が難しくなりますから、体外受精などの生殖補助医療を行ったほうがよい場合もあります。

まだパートナーもいないし、いますぐ妊娠できる状況ではないけれど、妊娠できる状態は維持したい、当面は痛みのコントロールをしたい、という場合には、薬物療法が中心になります。ただ、少し前までは、手術を受けるのは、妊娠の直前がよいと言われていましたが、近年方針が変わってきています。子宮内膜症という病気は、閉経するまでは自然に治ることはなく、再発を繰り返すため、手術をしてもまた再発してしまう可能性が高かったのですが、低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤や黄体ホルモン製剤の登場によって、手術後に服用すれば術後の良好な状態を維持することができるようになりました。そのため、妊娠が目的でなくても、薬物療法だけではコントロールできない症状がある場合などにも、手術が行われるようになっています。

がん化に関しては、子宮内膜症の卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)にがん化のリスクがあるという報告が出て、患者さんの間に不安が広がっています。現在、疫学的に高いエビデンスを作るため、日本産婦人科学会の腫瘍小委員会で長期的な調査を行っているところです。

現段階では、卵巣チョコレート嚢胞がある場合、4p以下なら様子を見て、10p以上あれば手術を行う。5pから9pのグレーゾーンに関しては、ケースバイケースの対応になります。ただ、病歴が長くなるにつれて、悪性化の可能性がより高くなるため、40歳以上の場合には、なるべく早く手術をしたほうがいいでしょう。

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