鳥取大学 原田先生に聞く!子宮内膜症の治療

【質問1】どのような症状があった場合に子宮内膜症の可能性が考えられますか?病院に行ったほうがいい症状とは、どういったものか具体的に教えて下さい。

鳥取大学医学部 生殖機能医学分野 原田 省先生

子宮内膜症の症状は大きくわけると2つあります。一つは月経痛、もう一つは不妊です。月経痛はとても個人差が大きいものですし、同じ人でもそのときによって痛みの程度が違ったりすることはよくあります。そこで、子宮内膜症である可能性を考えなければいけないのは、痛みがだんだんひどくなってくる場合です。「去年に比べると今年のほうが、痛みが強い」「月経のたびに痛みがどんどん強くなってきた」などの変化に注意しましょう。

痛みの強さは、その人の痛みに対する感受性の影響も大きいので、なかなか判断が難しい面はあります。最近の研究で、子宮内膜症の病巣から炎症性サイトカインという物質が多く産生されていて、それが刺激になって痛みなどの症状が引き起こされていることがわかってきました。子宮内膜症と診断される人は、それまでに市販の鎮痛薬を飲んでいる人が多いのですが、「市販の鎮痛薬を飲んでも痛みがコントロールできない」、「今までは月に1〜2日飲めば日常生活を送れたのに、最近では飲んでもしんどい、仕事に行くのがつらい」、「鎮痛薬を飲む量が以前より増えてきた」などが受診の目安になります。

なお、月経時の出血が増える「過多月経」は、子宮筋腫や子宮腺筋症を併発している場合に見られますが、子宮内膜症だけでは月経量が増えることはありませんし、月経周期が乱れる月経不順もあまり起こりません。

また、子宮内膜症では、月経時以外の痛みも現れます。下腹部痛、腰痛、排便痛、性交痛などです。痛みの程度としては、月経時の痛みが一番強いのですが、それに加えてこれらの痛みがある場合には、すでにかなり重症になっていることが考えられます。この場合は、できるだけ早めに産婦人科を受診して下さい。

【質問2】子宮内膜症は閉経まで治らない病気だといわれますが、治療を受けるメリットはどんな点ですか?

子宮内膜症は進行していく病気です。治療をしなければ、月経が繰り返されるたびに悪くなっていくことが多いのです。薬物療法にしても、手術にしても、治療をすれば痛みなどの自覚症状が改善されます。さらに、治療を続けていくことで、それ以上進行しないよう抑えることができます。

かつて、子宮内膜症の治療薬は、最長でも6ヵ月の使用制限があるホルモン薬しかありませんでした。このため、根治療法を行わない限り、時間の経過とともに再発してしまうという問題がありました。ところが、2008年に黄体ホルモン製剤や低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤が相次いで発売され、長期にわたった症状のコントロールができるようになりました。いずれも多くの女性が使える薬です。

当院では、年齢が若く、軽症の人には低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤、ある程度重症の人や低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤が効きにくい人には黄体ホルモン製剤と使い分けています。黄体ホルモン製剤には、排卵を抑制し、内膜の増殖を抑えるだけでなく、子宮内膜症の痛みの原因となるサイトカインの分泌を抑制する働きがあります。服用中は不正出血が見られるのですが、痛みが楽になる効果が強いと思います。個人差はありますが、服用開始から3ヵ月くらいで痛みが改善される場合が多いようです。

一方、不妊の場合は、腹腔鏡手術が治療の第一選択になります。薬物療法を行っている間は、排卵が抑制されるため妊娠しにくい状態にあります。手術を行う場合、軽症の人ではある程度、妊娠率の改善が見られるのですが、重症化して卵管や卵巣が子宮内膜症の病変に巻き込まれて癒着してしまっているような場合には、手術をしても自然妊娠が難しい場合があります。この場合は、ご本人の希望によって体外受精に進むこともあります。このように、痛みだけではなく、不妊の場合にもできるだけ早く治療を行ったほうが、治療後に自然妊娠できる可能性が高くなります。

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