鳥取大学 原田先生に聞く!子宮内膜症の治療

【質問3】子宮内膜症は長くつきあう病気といわれますが、あまり長期間、薬を使い続けるのは心配です。ホルモン薬を何年も続けると、がんになったりしませんか?

子宮内膜症の治療に使われる低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤や黄体ホルモン製剤を長期間使い続けたからといって、がんにかかりやすくなるということはありません。日本人のなかには、ホルモン薬に対してネガティブなイメージをもつ人が少なくないのですが、実際、これらの薬は長期に使用できます。低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤では、長期間の使用によって卵巣がんや子宮体がんのリスクが低下することがわかっています。卵巣がんは、排卵のたびに卵巣の表面が傷つき、それを修復する過程で発生することが一因とされていますが、低用量卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合製剤により排卵を抑制することで、卵巣がんの予防にもつながるのです。また、子宮内膜が薄く保たれるため、子宮体がんのリスクも大幅に減少します。黄体ホルモン製剤にも排卵を抑制し、子宮内膜の増殖を抑える働きがあるので、同様な副効用が期待できると思います。

【質問4】治療をせずに放置した場合、どんなリスクが考えられますか?

治療を受けずに放置すれば、痛みがさらに悪化する可能性があります。また、卵巣に古い血液がたまる卵巣チョコレート嚢胞(のうほう)が次第に大きくなっていきます。さらに、骨盤内の癒着がだんだん強くなって、自然妊娠できる可能性が低くなってしまいます。このため、今すぐには妊娠の希望がない方でも、痛みがあって病変がはっきりしている場合、手術を行うことが奨められますし、また、手術後は薬物療法を行って手術後のベストな状態を保つ方法もあります。

卵巣チョコレート嚢胞は、大きくなっても自覚症状があらわれないため、医療機関で超音波検査を行わないと、自分で気づくことができません。大きくなると、破裂するリスクが高まり、ある日突然、下腹部の激痛を起こして救急車で運ばれるという事態にもなりかねません。この場合、緊急手術になることが多く、何の準備もないまま入院という不測の事態を招いてしまいます。

さらに、最近の研究で卵巣チョコレート嚢胞を放置すると、卵巣がんに移行する可能性があることがわかってきました。現在、全国的な大規模調査が行われています。大きさが10cm以上で年齢が40歳以上の場合は、悪性の可能性を考えて、早めに手術を行ったほうがよいとされています。子宮内膜症そのものは命にかかわる病気ではありませんが、卵巣がんは短期間で進行してしまうため、早期発見が非常に難しく、婦人科がんの中でも命にかかわる可能性が高い病気です。卵巣がんにも、いくつかのタイプがありますが、卵巣チョコレート嚢胞からできる卵巣がんは、抗がん薬が効きにくく、進行すると治療が困難なケースが多いのです。

卵巣は数ヵ月であっという間に大きくなってしまうこともあるので、卵巣チョコレート嚢胞がある人は、とくに経過観察を欠かさないことが大切です。忙しいからと受診を先延ばしにしているうちに、卵巣が急激に大きくなって破裂したり、悪性化してしまったり、といったことを避けるために、定期的な受診は欠かさないようにして下さい。

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