プロジェクト
メッセージ

急にトイレに行きたくなったら、近くにトイレがなかったら、どうしよう。
そんな不安を、一人で抱えていませんか。
映画やイベントのお誘いを断ったり、
やりたかった仕事、通いたかった学校をあきらめたり…。
様々な不自由や、対処するための工夫、努力を一人で背負っていませんか。
潰瘍性大腸炎は、国内におよそ22万人もの患者さんがいるのに、
まわりから症状が気づかれにくく、見えない難病とも呼ばれています。
潰瘍性大腸炎についての理解を広げることで、患者さんへのサポートの輪を広げたい。
それが、私たちの願いです。

潰瘍性大腸炎との暮らしを、
話せる社会へ。

  • ※Murakami Y. et al.: J Gastroenterol., 54, 1070-7 (2019)

潰瘍性大腸炎の
主な症状・特徴

潰瘍性大腸炎は、大腸に炎症が生じて粘膜が侵され、びらん(粘膜のただれ)や潰瘍(粘膜のはがれ)ができて、
腹痛や下痢、血便などの症状が生じるほか、関節、皮膚、目など全身に腸管外合併症を伴うことがあります。

  • 腹痛
  • 直腸の知覚異常
  • 便失禁
  • 下痢
  • 慢性の経過
  • (粘)血便
  • 便意切迫感
  • 日内変動

「便意切迫感」とは?

このように潰瘍性大腸炎の症状は多様で、患者さんのQOLに大きく影響することがあります。
その中でも特に「便意切迫感(突然感じる激しい便意)」は影響が大きく、
患者さんが便意切迫感により社交行事への参加を断念している、※1
潰瘍性大腸炎の症状が制御されている患者さんであっても便意切迫感、
下痢または血便の症状を経験している、※2といった報告もあります。

  1. ※1 Pakpoor J. et al.:Gastroenterol Hepatol (N Y)., 19(2), 95(2023)
  2. ※2 Carpio, D. et al.: Eur J Gastroenterol Hepatol., 28(9), 1056(2016)

「便意切迫感」に不安を
強く感じている

「便意切迫感」は、“突然かつ緊急に感じる排便の必要性” と定義されています。※1-3
潰瘍性大腸炎の患者さんを対象にした調査結果をまとめた報告によると、潰瘍性大腸炎の症状が日常生活に与える影響として、
改善したい症状のトップは「便意切迫感」、次いで「下痢」「血便」「腹痛」が挙げられています。

潰瘍性大腸炎の症状のうち、
改善したい症状は何ですか?(n=501)

便意切迫感 62.5%、下痢 60.7%、血便 59.7%、腹痛 58.1%、残便感 38.9%、便もれ 36.9%、その他 12.4%。*Hibi, T. et al.: Inflamm Intest Dis., 5(1), 27(2020)
  1. ※1 Newton L. et al. J Patient Rep Outcomes. 2019: 3: 66. 本研究はイーライリリーアンドカンパニーの支援により行われた。
    本論文の著者のうち5名は、イーライリリーアンドカンパニーの社員である。著者にイーライリリーアンドカンパニーより講演料、コンサルタント料を受領している者が含まれる。
  2. ※2 Buchmann P. et al. Digestion. 1981: 22: 310-316.
  3. ※3 US Department of Health and Human Service [FDA Guidance for UC Endpoints] 2016.
    Available at: https://www.fda.gov/media/99526/download (Accessed August 2020).

「便意切迫感」との
暮らしを描いた
スペシャルムービー

「便意切迫感」に悩む患者さんの声を、歌とアニメーションで表現しました。
患者さんの努力や周りへの気遣いを多くの皆さんにご理解いただき、
私たちができるサポートのあり方を考えるきっかけになるよう願いを込めております。
歌唱を担当したのは、ご自身も潰瘍性大腸炎の患者である声優の中村千絵さんです。

中村千絵さんからの
メッセージ

【患者さんへのメッセージ】
潰瘍性大腸炎になっていろいろ大変なこと、思い通りにいかないことがあると思います。
同じ潰瘍性大腸炎という病気であってもそれぞれに合う治療法だったり食事の許容範囲だったりとか、病気の度合いも人それぞれだと思います。だからこそ、患者さん同士、お医者さん、あるいは周りのお友達や家族、近しい人たちと話すことで、少しでも気持ちが楽になったり、悩んでいるのは一人じゃないんだなって思えたらいいなって思います。
私も当事者ですので、一緒に頑張りましょう。
【周囲の方へのメッセージ】
私たち患者が抱えている不便さや心細さを知っていただいたり、ちょっとだけ理解してもらえたり、潰瘍性大腸炎のことに関心を持ってもらえたら、これからずっとこの病気と共存して戦っていかなくてはならない患者にとっては、とても心強く、毎日が過ごしやすくなると思います。
今回の動画が、その一つのきっかけになるといいなと思います。

患者さんへの調査より・便意切迫感の影響と実態

便意切迫感は「改善したい」症状でありながら、
「医療スタッフになかなか相談できない」という現状もあります。
そんな便意切迫感の生活や人生への影響と実態について、
患者さんを対象としたインターネット調査を行いました。(回答者数104人)

潰瘍性大腸炎における便意切迫感の影響と実態に関するインターネット調査/概要

調査対象
潰瘍性大腸炎患者104人
(20歳以上65歳未満)
※潰瘍性大腸炎を現在治療中で、「トイレに間に合わないのではないかという不安感がある」と回答された20歳以上65歳未満の方。
本資料当該調査結果の言及においては「患者さん」と記します。
調査手法
インターネット調査
調査地域
全国
調査期間
2022年12月
監修
日比紀文先生(北里大学北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センター 特別顧問)
実施者
日本イーライリリー株式会社
調査1

便意切迫感による
日常生活での困りごと/
便意切迫感の人生への影響

多くの患者さんが「トイレの待ち時間に不安を感じる」と答え、
「仕事・学校を辞めた」など、人生に大きな影響があった患者さんも少なくありません。

便意切迫感によって困っている、
悩んでいるのはどのようなことですか?

トイレの待ち時間に不安を感じる 49.0%、外出をためらう 32.7%、周囲の人にトイレが多い・長いと思われないか不安に感じる 26.9%、食事の内容が制限される・食べるものが限られる 26.9%、食事のタイミングに気を遣う 23.1%、知人や友人に会うのをためらう 17.3%、異性との交流や交際に消極的になった 10.6%、人目を避け、引きこもるようになった 9.6%、趣味としていたものが楽しめなくなった 7.7%、新しく対人関係を築くのをためらう 6.7%、おしゃれができなくなった・制約されるようになった 5.8%、その他 3.8%、あてはまるものはない 28.8%

便意切迫感によって
人生・ライフイベントに
どのような影響がありましたか?

仕事・学校を辞めた 11.5%、やりたい仕事・行きたい学校を諦めた 8.7%、休職・休学した 8.7%、結婚を諦めた・考えられなくなった 7.7%、転勤・異動・転校した 6.7%、出産を諦めた・考えられなくなった 4.8%、仕事をフルタイムからパートタイムに切り替えた 3.8%、パートナーと別れた・離婚した 1.0%、引っ越した 1.0%
調査2

患者さんの便意切迫感との
付き合い方

多くの患者さんが「便意切迫感と上手に付き合っている」と考える一方、
便意切迫感に対処するために使っている時間について
「60分以上」と回答した患者さんも20%近くに上り、全員の平均時間は30.4分。
大変な状態が当たり前になっているなか、患者さんの工夫や努力によって
日常生活が維持されている可能性があります。

便意切迫感とどの程度
うまく付き合えていると思いますか?

「とてもうまく付き合えていると思う=10」から
「全くうまく付き合えていると思わない=1」
までの10段階

10 9.6%、9 7.7%、8 17.3%、7 18.3%、6 11.5%、5 21.2%、4 3.8%、3 6.7%、2 1.9%、1 1.9%。平均:6.5

便意切迫感に対処するために使っている
時間について、
直近1週間の1日あたりの
平均時間を教えてください。

5分未満 16.3%、5〜9分 7.7%、10〜14分 18.3%、15〜19分 7.7%、20〜29分 10.6%、30〜59分 21.2%、60分以上 18.3%。平均:30.4分
調査3

うまく付き合っていると
思っているが、
本当は
解放されたい「便意切迫感」

便意切迫感からくる不便や不安から解放されたいと思う度合いについて、
40%以上の患者さんが「とても解放されたい」と回答し、
「トイレを気にすることなく何でもできる生活をしたい」と答えた患者さんは98.1%に上ります。

便意切迫感に伴う不便や不安から、
どの程度解放されたいと思いますか?

「とても解放されたい=10」から
「全く解放されたいと思わない=1」まで
の10段階

10 42.3%、9 6.7%、8 12.5%、7 13.5%、6 12.5%、5 6.7%、4 1.0%、3 1.0%、2 2.9%、1 1.0%。平均:8.0

トイレを気にすることなく、
何でもできる生活をしたいですか?

希望する 98.1%、希望しない 1.9%

患者さんの声・周りの人々や社会に望むこと

「潰瘍性大腸炎との暮らしを話せる社会」の実現に向けては、
潰瘍性大腸炎の患者さんの声に耳を傾けることが大切と考え、日本イーライリリー株式会社は、
さまざまな年齢、罹患歴の潰瘍性大腸炎の患者さん6人にお集まりいただき、座談会を行いました※1
「潰瘍性大腸炎との暮らしを話せる社会」の実現をテーマに、潰瘍性大腸炎についての経験談や、
「便意切迫感」についての率直なお気持ち、そして周りの人々、社会に望むことをお聞かせいただきました※2

  • 実施時期:2023年6月 主催:日本イーライリリー株式会社
  • ご紹介するのは一部の患者さんのコメントであり、患者さんの全てに当てはまるものではありません。
Aさん(50代 女性)

職場の同僚には病気について伝えているし、家族ももちろん知っているが、潰瘍性大腸炎のホントのところは理解してもらえていないと感じる。
この病気は点ではなく線、つまりずっと続く大変なものだ、ということはなかなか伝わらない。
けれど以前「安倍さんと同じ、大変な病気なんだね」「調べてみたよ」と言ってくれる人がいて、とても嬉しかった。
興味を示してくれる、知ろうとしてくれる、そんな姿勢だけで、患者として救われるものがある。

Bさん(20代 女性)

中学生のころ、授業中何度もトイレに行くのが恥ずかしく、どうしたらいいか悩んでいた。
先生に相談したところ「トイレという表現ではなく、『保健室に行く』という言い方にしよう」と合言葉を決めてくださった。
潰瘍性大腸炎と共に暮らすには色んな工夫が必要だけど、
周囲の人に少し気遣ってもらったり協力してもらうことで、ずいぶん生活しやすくなる。

Cさん(60代 男性)

仕事を始めてから2年おきに3度も潰瘍性大腸炎の症状が悪化して入院した。
また、出張中にトイレから出られなくなって、会議をすっぽかしてしまったこともある。
そんな経験もあり「自分が不在になったときにどうするか」を常に考えて、今まで仕事をしてきた。
そして、職場でそれができる、理解してくれる同僚に出会えたことがありがたく、家では妻が明るく接してくれることに、救われていると感じる。

Dさん(50代 男性)

わたしは病気について周りの人に話すことに抵抗がなく、みんな病気について知っていて、何も言わずにいてくれている。職場でも自由にトイレに行けるが、トイレがいっぱいのときは本当にしんどい。我慢ができず違うフロアのトイレに行ったり。潰瘍性大腸炎の患者同士だと、お互い「わかるわかる!」となって、それぞれに深い共感がある。
これからは、患者ではない人にも理解、共感してもらえる、自分の心を安心させられる社会になればいいなと強く思う。「わかるわかる」と言われることの安心感がとても大事。そのために、病気について話すきっかけが必要。

Eさん(60代 男性)

便意切迫感はなかなか理解してもらえないもの。再燃したときは、本当にトイレが我慢できない。
たとえば職場でトイレに頻繁に行くことが「サボっている」と思われると困るので、あらかじめ病気について職場の人に伝えておくことで気持ちが楽になる。病気について話すことは、自分の身を守ることだと思っている。
でも、話すことで、昇進に影響があるかもしれない、と感じることも。
でもまずは、患者側から理解してもらえるように努めることも大事だと思う。自分はそうすることが周りの理解につながった。

Fさん(30代 男性)

わたしは主治医の先生に便意切迫感について話していて、便意切迫感が調整のバロメーターのようになっている。自分の中の感覚的な基準と、毎日の記録(トイレの回数、時間、切迫感の強さなど)を先生に伝えている。
職場では、一緒に仕事をしている人には病気について伝えており、同僚もトイレに行きやすい雰囲気を作ってくれる。「今時間があるので、トイレ行って来たら?」、「トイレ大丈夫?」と声をかけてくれる。
でも正直、最初は話すことに勇気が必要だった。病気のことを話しやすい社会になってほしいと強く思う。

日比先生より
「患者さんが過ごしやすい
世の中になるために」

監修
日比 紀文(ひび としふみ)先生日比 紀文 先生
(ひび としふみ)

北里大学北里研究所病院
炎症性腸疾患先進治療センター 特別顧問

潰瘍性大腸炎の患者さんは若い時期に発症する人も多く、その後の人生で受験、就職、結婚、出産などさまざまな経験をしていきます。この時期には健康な人でもいろいろと悩みの多い日々を送っているものですので、患者さんは若さゆえの悩みに加えて、病気にともなう悩みが重なることになります。その時々で不安を感じること、悩むことは、患者さんによって異なります。その不安や悩みのなかには、医師には話しにくいこともあるでしょう。特に潰瘍性大腸炎の場合、便意切迫感など排便に伴う問題は、親しい人間であっても話しにくく、我慢を強いられている人は多いと思います。患者さんが医師にすべてを話せるわけではないことを我々も承知しています。何か悩みを抱えていて、医師に話しにくいと感じた場合には、看護師や薬剤師、栄養士など、ほかの職種の医療スタッフに、遠慮せずに相談してほしいと思います。患者さんが一人で悩みを抱えずに、相談しやすい環境を作っていくことが大切です。そして、潰瘍性大腸炎という病気と患者さんの抱える悩みを周りが理解することが、患者さんが過ごしやすい世の中になるための、一歩になると思います。