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心電図クイズ

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2

労作時息切れと体重減少で来院した80歳の女性
外来受診時の心電図所見は何か?

難易度1

[出題]
  • 慶應義塾大学医学部 臨床検査医学 講師 村田 光繁
  • 循環器内科 教授 福田 恵一

2

完全房室ブロックのため房室接合部補充調律を合併した心房細動(ジギタリス中毒)

解説

僧帽弁狭窄症に特徴的なI誘導およびaVL誘導の低電位は認められず,著明な左室肥大を認める。明らかなP波や細動波(f波)は認められず心房停止の可能性もあるが,もともと心房細動であったことから,心房細動の長期罹患および左房拡大によりf波が減少したと考えるのが妥当である。RR間隔が一定であり完全房室ブロックの存在と著明なU波を認めていることから,低カリウム(K)血症の存在が示唆され,ジギタリス中毒を真っ先に疑う。近医の処方でジゴキシン0.125mgを服用中であったが,入院後の採血検査では血中K濃度4.8mEq/L,ジギタリス濃度1.0ng/mLといずれも正常範囲内であった。しかし,房室結節の伝導抑制は明らかであったためジゴキシンを中止したところ,房室ブロックは消失しRR間隔不整の心房細動となった。本例は近医の心電図検査で,ジギタリス中毒で見られる房室接合部頻拍を認めていたが,ジギタリス濃度が正常であったため放置されていた。

ジギタリス血中濃度は臨床上,決して絶対的なものではなく,電解質異常(特に低K血症),腎機能障害などの誘発因子がある場合や器質的心疾患の中には,過敏な(心筋局所濃度が上昇する)症例があることを留意すべきである。

図2には,食欲不振を主訴に来院し,ジギタリス濃度3.8ng/mLであった症例を示す。心電図では,大動脈弁閉鎖不全症による左室容量負荷に加えて,いわゆる盆状で典型的なジギタリス効果の所見であるが,不整脈は認められていない。心電図所見だけではジギタリス中毒の診断は困難である。

このように,ジギタリス中毒の病像として,心臓以外の消化器症状,神経症状,眼症状などが主症状となることがあり,ジギタリスを使用する際には,患者の症状や少量投与や治療域であっても中毒となりうることを銘記する必要がある。

難易度について:ジギタリス中毒は,決して見落としてはならない所見である。一昔前ほどジギタリスの使用頻度は高くなく,ジギタリス中毒を診る機会が減っていることもあり,意外と見過ごされるケースがある。心拍数が一定の心房細動や房室接合部補充調律の心電図を見たら,ジギタリス中毒を除外する必要がある。

図2. 消化器症状で発覚したジギタリス中毒の心電図

図2. 消化器症状で発覚したジギタリス中毒の心電図

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