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第6回 薬物療法その1 細胞毒系抗がん剤

今回から、薬物療法について詳しくお話しをしていきたいと思います。まずは、抗がん剤の大多数を占める細胞毒系抗がん剤について解説します。

イラスト白血病など全身性のがんや、固形がんでも血管やリンパ管を通じてがん細胞が全身へ回ってしまっている遠隔転移や再発などの場合には、薬物を使った治療が行われます。
使われる薬物の筆頭が抗がん剤です。そして現在のところ世に出ている抗がん剤の大多数が、いわゆる「細胞毒」といわれるものです。細胞が分裂する全過程あるいは特定の時期に投入され、細胞内の遺伝子に作用します。というのも、がん細胞は正常細胞よりはるかに急速に増殖・分裂するのが一般的で、分裂中の細胞では遺伝子のDNAがほどけてむき出しになっているため、不安定で外からの影響を受けやすい状態にあるからです。早い話、細胞分裂中の細胞は通常時より抗がん剤が効きやすいのです。
抗がん剤が、がん細胞に働きかける道筋(作用機序)には、いくつかのパターンがあり、グループ分けすることができます1)。代表的なものは、(1)アルキル化薬(2)代謝拮抗薬(3)白金製剤(4)トポイソメラーゼ阻害剤(5)抗がん性抗生物質(6)微小管作用薬の6種類です。駆け足でご紹介していきます。

(1) アルキル化薬
抗がん剤の中では最も早く開発されました。マスタードガスという毒ガス兵器の研究の産物で、禍転じて福となったような薬です。体内に投与されると、DNAに炭化水素基(アルキル基)をくっつけて結合します。そうしてニ本鎖のはずのDNAを一本鎖にしたり、二本鎖をほどけなくしたりしてDNA複製を妨げ、がん細胞を破壊するのです。代表例はシクロホスファミドで、乳がんや肉腫はじめ、ほとんどのがんで使われます。ブスルファンも白血病に対する造血幹細胞移植の前治療などによく用いられます。

(2) 代謝拮抗薬
この薬剤の多くは、構造がDNAの材料(基質)と似ているのが特徴です。そのためDNA複製に働く酵素が間違えてそちらに働きかけ、結果として複製が妨げられたり、あるいはそのまま取り込まれて異常なDNAを作ったりします。がん細胞の分裂は失敗し、腫瘍が大きくならないどころか、時には小さくもなります。代表例がフルオロウラシルで、消化器がんをはじめさまざまながんに用いられます。DNA複製に必要な葉酸の代謝を阻害することでDNA複製を妨げるものも、代謝拮抗薬の中に含まれます。代表はペメトレキセドで、肺がん治療によく用いられます。

(3)白金製剤
その名のとおり、薬の構造中に白金が含まれています。投与されるとDNAの二本鎖に白金が結合して橋をかけ、複製を阻害し、結果としてがん細胞を自滅させます。代表例はシスプラチン、カルボプラチンなどで、大腸がんにはオキサリプラチンが多用されています。

(4) トポイソメラーゼ阻害剤
細胞分裂の際に、DNAの切断と再結合を助けるトポイソメラーゼという酵素の働きを妨げて、切断部位に入り込み再結合を阻止します。DNAが切断されたままの状態となり、がん細胞は死滅します。代表例はイリノテカンやエトポシドで、さまざまながんに使われます。

(5) 抗がん性抗生物質
土壌に含まれる微生物から作られ、がん細胞を死滅させます。作用の仕方にはいろいろありますが、たいていは、がん細胞のDNA合成を阻害したり、DNA鎖を切断するなどしてがん細胞を直接的に死に追いやります。よく使われるものとしては、ブレオマイシンやドキソルビシンなどが挙げられます。

(6) 微小管作用薬
「微小管」は、細胞分裂で染色体の分離に働く「紡錘体」を作っているものです。「微小管作用薬」は微小管に結合して紡錘体の働きを阻害し、細胞分裂を妨げて細胞を自滅させます。代表薬に、ビンクリスチンやパクリタキセルがあります。

これら作用機序の違いによって、投与の仕方にも違いが出てきます。
アルキル化薬と抗がん性抗生物質は「濃度依存性」の抗がん剤といわれ、がん細胞との接触時間は短くても、濃度が一定以上あれば効力が得られることが分かっています。マイトマイシンCなど、1回の点滴が30分程度で済むものだと、外来治療にも便利です。
一方、代謝拮抗薬やトポイソメラーゼ阻害剤、微小管作用薬は、「時間依存性」の抗がん剤といわれ、低用量を長期間あるいは何度も投与することになります。というのも、これらの薬剤は細胞分裂周期の特定の時期に効果を発揮するのですが、すべてのがん細胞の周期が一致しているはずはありません。そこで薬剤を長時間、体内に存在させることが重要になるのです。

次回は、「分子標的薬」をテーマにお話しします。

【参考文献】

  • 1)
  • 国立がん研究センター,全国共通がん医科歯科連携講習会テキスト第1版

記事提供:ロハス・メディカル編集部

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アナストロゾール | イリノテカン | オキサリプラチン | ゲムシタビン | ドセタキセル | パクリタキセル

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